認知症いろいろ・介護施設選びもいろいろ
もう随分前から2世帯、3世帯同居などは見なくなっていて、私もそうだけれど両親は九州で私は東京。
「今は両親も元気で弟が同居しているので心配ないけど・・・」
「いやいや、弟が病気になったら・・・」
いろいろ考えることはあるし弟ばかりに任せるわけにもいきませんよね。
本日は介護施設の選び方について私の経験の中からお話しさせて頂きます。
さまざまな理由
介護施設に入居されるご相談に来られる方々の中には
・両親ふたりで過ごしていたが、父、母のどちらかかが亡くなり独居になり、心配で子供のもとに呼び寄せられるが同居は難しく介護施設に入居を考えられているケース。
・ご家族で介護にあたられていたが、身体的症状、認知症症状が酷くなり、ご家族が疲弊され介護が困難になり入居を希望されるケース。
・何かの病気で入院され、退院後は自宅での生活は難しいとのことで入居に踏み切られるケース。
・老老介護でやむなく入居の決断をしたケース。
等々さまざまな理由があります。
ハード面よりソフト面
まるでホテルのような介護施設も多くなりました。食堂も広くテーブルや椅子も素敵で絵画も飾ってあります。またアットホームな感じの施設、庭には畑があって自家栽培もできたり、お部屋も様々な広さもありベットマットが有名メーカーのものを入れているところもあります。確かに住むなら綺麗なところがよいですよね。
「終の棲家」として施設探しをされると思います。長く心地よく安心して住みたいですよね。確かに建物(ハード)も大事ですが、一番大事なのは働いている人(ソフト)ではないでしょうか。明るい雰囲気、飛び交う笑い声、利用者さんの表情、などを見て、納得できる棲家を見つけて頂きたいと思います。すれ違う職員に急に話しかけて質問してみてもよいかと思います。
よい施設は入った瞬間、明るく温かいイメージを感じると思います。
ご本人に合った環境が一番
息子さん、娘さんの側で暮らすために住み慣れた環境から離れた施設で暮らされるケースもありますよね。子供からすると高齢で一人暮らしならなおさらの事、何かあったらすぐに駆け付けられないと思い、側に呼び寄せることを希望します。ご本人が納得されていればよいのかもしれません。しかし長く住み慣れた地域でご友人たちも沢山いらっしゃったと思います。長いこと施設勤務をしていますと、ホームシックで泣いている方もみかけることもありますし、元気のなくなる方もしばしばいらっしゃいます。
ご本人にとっての良い環境ってどこなのでしょうか。思い切って住み慣れた環境で施設を探される選択肢もあってもよいかと思います。
また認知症の周辺症状が酷くご家族の生活が脅かされ疲弊し急ぎ施設を探す場合もあると思います。少ない時間での選択になるとは思いますが何がご本人にとって良い環境なのかを考えてください。体験お泊りができる施設もありますから、まずは体験して頂くのもよいかもしれませんね。
思い出しました!ご本人が納得されないままの施設入居はよくある話です。
玄関を入られ、開口一番!「私は老人ホームには住みたくない!帰ります!」と言われ「ここは老人ホームではないですよー!」と笑顔で答えたら、看板を指さし「噓つき!あそこに老人ホームって書いてあるじゃない!」と大きな声で叱られました。ドキっとしましたが顔色かえず「あれはお隣の看板です。中にどうぞ」と何もなかったように施設内に入って頂きました。この方とは山あり谷ありありましたが、楽しい思い出ばかりです。
見学だけではわからない
見学の時間って短くないですか?確かにいろんな話も聞きますし、質問にも答えてもらえますが、食事も食べてみないとわかりません。しかもその日だけではなく数日食べてみる、夜も過ごしてみないとわからない、お風呂も入ってみないとわからない、そして住んでいる人達の話も聞いてみないとわからないし、職員の対応もみないとわからないと思います。体験お泊りすることをお勧めします。本来であればご家族も一緒にご体験できるとよいのですが、今だにご家族一緒の体験お泊りをしている施設をみたり、聞いたりしたことがありません。
あってもよいですよね。
アクティビティやイベント時の見学
これもまた見学し体験することもよいでしょう。楽しいことを皆さんが楽しめることをやっている施設は活気があります、地域連携で地域に拡げた施設もあります。人生は楽しむことです。マンネリなアクティビティはなく、住んでいる方が楽しめるものがよいですよね。
まとめ
介護施設選びはなかなか難しいと思います。大きな会社だから大丈夫と言うわけではありません。小さい施設だから駄目だと言うわけでもありません。よく見てよく体験して決めて頂ければいいと思います。入居された後もよくご家族とも話しをし、ご家族と一緒にご本人を支えていく職員が多いところは素敵な施設です。施設に入ったからといっても任せっぱなしにしないことが大事です。
今後、介護施設を探される皆さんに少しでもお役に立てれば幸いです。
日本認知症研究会副代表。看護学校卒業後、内科外来、透析室勤務を経て訪問看護ステーションにて3年間在宅医療に関わり、その後、介護付き有料老人ホームの看護職員として長年務められる。多くの認知症の入居者に携わるうちに、認知症について興味を持ち看護師として貢献できる認知症ケアについて学ばれる。周囲の仲間からは「大将」の愛称で親しまれ、医師主体の研究会の代表を務められた他、中国、イタリアで開催された学会でのご講演など多方面で活躍されている。