薬の引き算
不安障害の80代女性。初診時、もの忘れ、動悸、めまい、ほてり、発汗、息苦しさ、不安、不眠などと愁訴が多彩でした
不安障害の80代女性
初診時、もの忘れ、動悸、めまい、ほてり、発汗、息苦しさ、不安、不眠などと愁訴が多彩でした。
ポリファーマシー(必要とされる量以上に多くの薬剤が処方されている状態)でしたので、かかりつけ医からの処方薬を漸減・中止して、抗不安薬のロフラゼプ酸エチル0.5mgだけにしました。
すると、すべての愁訴が徐々に改善して、「もの忘れも良くなった」と笑顔がみられるようになりました。
軽度認知障害の90代男性
かかりつけ医から処方されていた3種の降圧剤、メマリー(認知症の薬)、抑肝散を漸減・中止して、プロテインを摂取すると、認知・腎機能低下、貧血が改善し、グラウンドゴルフも再開して、意欲が出てきました。
アルツハイマー型認知症と診断されていた80台の男性
ドネペジル(認知症の薬)、スタチン(コレステロールの薬)、プロトンポンプ阻害薬(逆流性食道炎・胃潰瘍の薬)、3種の降圧剤などを徐々に減量・中止することにより、イライラもなくなり元気になって、もの忘れも良くなりました。
まとめ
高齢者では6種以上になると薬害有害事象が発生しやすくなると報告されています。もちろん、もの忘れも起こりやすくなります。特に、降圧剤、スタチン、プロトンポンプ阻害薬は問題です
上記の方々のように、超高齢者では、薬の段階的な引き算(漸減・中止)により、認知機能も改善して、精神状態も安定するようです。
超高齢者で6種以上の薬を飲んでいる方は、まず主治医と相談の上、減薬してもらいましょう。
宮崎医科大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構菊池病院(熊本)元院長。熊本県の認知症中核病院の専門医として、熊本県全域から訪れる多くの認知症患者さんを診療され、平成30年に熊本駅前木もれびの森心療内科精神科を開院。食事・サプリメント指導により患者さんの栄養状態を改善し、お薬の量を最小限にされ、精神面の安定・改善をめざす、栄養療法を主体とした副作用の少ない「やさしい医療」を実践されている。