前頭側頭葉変性症(FTLD)の分類

投稿日:2023.06.08

前頭側頭葉変性症(FTLD:frontotemporal lobar degeneration)とは、前頭葉と側頭葉前部が障害されて起こる認知症の総称です。アルツハイマー型、レビー小体型に次いで、3番目に多い認知症ですが、統計上、アルツハイマー型と重なっている場合もあります。前頭側頭葉変性症は、その症状から3タイプに分類されています。

もくじ
前頭側頭葉変性症(FTLD)とは
前頭側頭葉変性症(FTLD)・症状にもとづく3分類
前頭側頭葉変性症(FTLD)・分子病理にもとづく分類

前頭側頭葉変性症(FTLD)とは

前頭側頭葉変性症(FTLD:エフティーエルディー)とは、アルツハイマー型以外で、前頭葉と側頭葉前部が障害されて起こる認知症のことをいいます。1996年に、イギリス・マンチェスター大学のグループによって提唱されました。

前頭葉は、理性や意欲、計画性など、いわゆる「人間らしさ」をつかさどる重要な領域です。前頭葉の機能が低下すると、さまざまな行動障害や言語障害などが現れます。

前頭側頭葉変性症は、症状によって3タイプに分類されますが、いずれも病識(病気の自覚)はなく、自発性が低下するのが特徴です。

前頭側頭葉変性症(FTLD)・症状にもとづく3分類

前頭側頭葉変性症(FTLD)は、症状から3つに分類されています。1つめが、人格変化を特徴とする前頭側頭型認知症(FTD:エフティーディー)で、3タイプの中で、最も多い認知症です。

残りの2つは「認知症の失語状態」ともいうべき症状が特徴で、言葉の意味がわからなくなる意味性認知症(SD:エスディー)と、発語が困難になる進行性非流暢性失語(PNFA:ピーエヌエフエー)に分けられています。脳梗塞などで起こる失語症は進行しませんが、これらの失語は進行するのが大きな違いです。また、病状が進むにつれて、認知機能障害も現れます。

 

各タイプの特徴

前頭側頭型認知症
FTD:frontotemporal dementia
●行動障害が顕著に出る。代表的なのはピック病
前頭葉の外側(穹窿面:きゅうりゅうめん)や前頭葉底面が障害されて起こります。理性的・社会的なふるまいができなくなり、人格変化や行動障害が現れます。ピック病とほぼ同義です。

意味性認知症
SD:semantic dementia
●言葉の意味がわからなくなり、会話が通じない
側頭葉前部の障害によって起こります。話し方はスムーズでも、言葉の意味が理解できず、会話が成立しなくなります。アルツハイマー型より、進行が早いのが特徴です。

進行性非流暢性失語
PNFA:progressive nonfluent aphasia
●発話がスムーズにできなくなる
脳の中央あたりにある上前側頭回(じょうぜんそくとうかい)や弁蓋部(べんがいぶ)が障害されて起こります。言葉の意味は理解できますが、スムーズに話すことができなくなります。読み書きも困難になります。

前頭側頭葉変性症(FTLD)・分子病理にもとづく分類

近年は研究が進み、前頭側頭葉変性症(FTLD)の病理的な特徴が明らかになっています。脳に蓄積する異常タンパクの病理分類も行われています。

大半を占めるのが、タウタンパクが蓄積する「FTLD-tau(タウ)」という疾患群と、TDP(ティーディーピー)-43というタンパク質が蓄積する「FTLD-TDP」という疾患群です。

前頭側頭葉変性症をタンパク質による分子病理的に分類すると、上記の2つを含め、大きく4種の疾患群にまたがる幅広い概念として示すことができます。ただし、前頭側頭葉変性症(FTLD)の大半はピック病のため、臨床上は、これらの分類が使われることはほぼありません。

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