睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、認知症の重大なリスクです。そして、中年以降の人の有病率は、かなりの数に上るといわれています。そこで、SASについて詳しく説明したいと思います。SASは、睡眠中に一時的に呼吸が止まる状態が繰り返される病気です。これにより睡眠が断続的に中断され、質の低い睡眠が続くことから、日中の強い眠気や集中力の低下などの症状を引き起こすことがあります。
SASの種類
1.閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive SAS: OSAS)
気道が狭くなり、空気の流れが一時的に遮断されるタイプです。舌や喉の筋肉が緩んで気道が塞がり、特に肥満やアルコール摂取がリスクを高めるとされています。OSASは最も一般的なタイプです。
2.中枢性睡眠時無呼吸(Central SAS: CSAS)
脳が呼吸を促す信号を適切に送れなくなり、一時的に呼吸が停止する状態です。心臓疾患や脳血管障害、特定の薬の副作用で起こることがあります。
症状
・睡眠中の激しいいびき
・呼吸が止まる、息が詰まるような状態
・夜間の頻尿
・朝の頭痛
・日中の過度な眠気、集中力の低下
・口や喉の乾き。
原因とリスク要因
・肥満:特に首回りの脂肪が気道を圧迫しやすくします。
・加齢:筋力低下により、気道が狭くなることがあります。
・遺伝:家族歴がある場合も発症しやすい傾向があります。
・アルコールや鎮静剤の使用:喉の筋肉が緩むため気道が塞がります。
診断
SASは終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と呼ばれる睡眠検査によって診断されます。これは睡眠中の脳波、酸素飽和度、呼吸の状況を測定するものです。
治療法
・CPAP療法:寝ている間にマスクを装着し、気道に空気を送り込んで無呼吸を防ぐ治療法です。
・口腔内装置:軽症~中等症の場合、マウスピースを装着して気道を広げる方法も効果があります。
・生活習慣の改善:体重の減少、アルコールの制限、仰向け寝の改善。
・外科手術:気道の構造的な問題が原因であれば、手術も考慮されます。
合併症と注意点
SASを放置すると、認知症だけではなく、血圧上昇・心臓疾患・脳卒中・糖尿病のリスクが増加し、うつ病・不安障害も難治になるため、適切な治療と日常管理が重要です。SASの症状があれば、早めに医療機関での検査が推奨されます。
宮崎医科大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構菊池病院(熊本)元院長。熊本県の認知症中核病院の専門医として、熊本県全域から訪れる多くの認知症患者さんを診療され、平成30年に熊本駅前木もれびの森心療内科精神科を開院。食事・サプリメント指導により患者さんの栄養状態を改善し、お薬の量を最小限にされ、精神面の安定・改善をめざす、栄養療法を主体とした副作用の少ない「やさしい医療」を実践されている。