認知症の人と家族にも合うサービス選びを

投稿日:2023.06.08

介護サービスにはさまざまな種類があります。どのサービスを選ぶかは、介護を受けるご本人の意向や、状況の改善を優先して決めることが大切ですが、支えるご家族の負担を軽減するサービス選びもまた大切です。 多くの人は、ホームヘルパーや介護福祉士に自宅に来てもらう「訪問介護」を利用していますが、患者さんを預けられる施設での「通所介護」を合わせて利用することで、週に何時間かでも、ご家族が介護から解放されるひとときを得ることができます。

もくじ
住み慣れた自宅で介護できる「訪問介護」
よい気分転換にもなる「デイサービス」
最大30日まで宿泊できる「ショートステイ」
要介護度で変わる、利用可能な施設
より良い施設選びのポイント

住み慣れた自宅で介護できる「訪問介護」

多くの高齢者が利用しているのは、住み慣れた自宅で、できる限り自立した生活を送ることを目的とした訪問介護です。「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つのサービスからなり、介護保険法で認められている範囲でサポートを受けられます。

身体介護は、介護サービス利用者の体に触れて行う介護で、食事、排泄、入浴の手助けが主な内容です。また、起床や就寝、服薬の介助、着替えの介助、体位変換もその範疇となります。

生活援助は、利用者本人の生活をサポートするサービスで、家事代行サービスに内容が似ています。しかし、しっかり線引きすべきなのは、利用者の周囲の人に関わることや、やらなくても日常生活に支障がない、必要最低限以外のことは対象ではないということです。

例えば、居室の掃除や洗濯、食事の準備、後片付け、生活必需品の買い物などの家事は代行してもらえますが、サービス利用者以外の居室の掃除、洗濯、買い物、調理はその範疇ではありません。また、ペットの世話、草むしりなどの園芸作業、自家用車の洗車も、利用者本人の生活に必須な作業ではないため対象にはなりません。

通院等乗降介助は、「介護タクシー」の通称で呼ばれるサービスで、ホームヘルパーの資格を持ったドライバーが自宅と病院の送迎を行ってくれます。

 

よい気分転換にもなる「デイサービス」

通称「デイサービス」と呼ばれる「通所介護」は、サービス利用者が施設に足を運んでサービスを受けます。

デイサービスに含まれるのは、自宅からの送迎、施設で過ごす間の食事、入浴、排泄の介助、機能訓練、趣味やレクリエーション、看護師による健康チェックなどです。1日3時間から最長14時間の間で、1時間刻みの設定でサービスを受けることができますが、朝、迎えに来てもらい、日中を施設で過ごし、夕方に自宅へ送り届けてもらうスケジュールが一般的です。

デイサービスは、利用者本人にも、その家族にも大きなメリットがあります。利用者にとっては、他人と交流し、レクリエーションなどを楽しむことで、社会的孤立感の解消や認知症予防などが期待できます。また家族は一時的に介護から離れられることで、気分転換や休息など、心身の負担が軽減できます。

デイサービスには、認知症患者さんが専門的に利用できる「認知症対応型」もあります。施設には、認知症についての専門知識や研修実績を持っているスタッフが揃い、施設の環境やプログラムにも、認知症患者さんが過ごしやすい工夫が凝らされています。認知症の家族に向き合うことに悩む家族へアドバイスもしてくれるので、高齢化社会を支える頼もしい味方として、今、注目を集めているサービスの1つです。

このように、メリットが多いデイサービスですが、デメリットについても知っておく必要があります。訪問介護に比べ、利用頻度によっては費用負担が大きく膨らみます。また、利用者同士でトラブルを起こし、逆にストレスが増えることもあるので、その可能性も加味しながらじっくり検討しましょう。

最大30日まで宿泊できる「ショートステイ」

デイサービスの中には、そのまま宿泊ができる「お泊りデイサービス」を提供している施設もあります。しかし、介護する家族の都合で、もっと長期的に介護ができなくなるケースもあります。例えば、事故で大けがを負ってしまったり、しばらくの間、遠方へ行くために家を留守にしなくてはならなくなったりといった場合です。

 

そんな時に利用できるのが「ショートステイ」と呼ばれる短期入所生活介護で、介護保険施設に1泊2日から最大30日まで短期的に入所できます。

家を留守にする場合は、事前に予定がわかるはずです。サービスの必要性を感じたら、まずはケアマネジャーに相談し、空きがある施設の具体的なサービス内容や見積もり金額を提示してもらいましょう。長期にわたり、利用者が過ごす場所なので、その施設の特色や環境などはよく吟味する必要があります。人気がある施設や、大型連休・年末年始などは予約が殺到するので、できれば2カ月前までには予約を入れられるよう調整しましょう。

ただし、不慮のケガなどの場合は、諸条件をじっくり検討する余裕はありません。有料老人ホームなどが設けているショートステイなら、介護保険適用外のため費用はかさんでしまいますが、希望に沿った条件で入所できることがあります。

要介護度で変わる、利用可能な施設

介護を受けるご本人の身体の衰えや認知症の症状が悪化した場合、また、介護する側の家族も高齢者となり、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどでは介護しきれなくなった場合は、施設への入所を検討することになります。

介護保険を利用して入所できる施設は、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4種です。介護療養型医療施設は2024年3月の廃止が予定されており、それに代わる施設として新設されたのが介護医療院です。

どの施設が利用できるかは、要介護度や利用者の条件により異なりますが、65歳以上、または40~64歳で16種の特定疾病のいずれかに該当し、要介護認定を受けていることは共通の入所条件です。

介護老人福祉施設は、安い費用で利用できることもあって人気が高く、入所待機者数が増えてしまったため、2015年に入居基準が厳格化されました。現在は、認知症など常に介護が必要な場合を除き、要介護3以上が入所条件となっています。それでも、人気の施設は入所までに2~3年を要する場合があります。

介護老人保健施設は、病院で治療を終えた人が、自宅に戻るまでの中間施設として位置づけられているため、入所期間は3~6カ月の間に定められています。

介護療養型医療施設は、慢性的な病気を抱えている人が対象となる施設です。そのため、終身制ではなく、医療ケアが必要なくなったと判断されると退去しなくてはなりません。これに変わる介護医療院は終身制のため、一生入所することが可能となりました。ただし、要介護度が高い人が優先的に入所を許可されます。

より良い施設選びのポイント

長期にわたり、お世話になる可能性が高い介護施設は、よく吟味して選ぶ必要があります。しかし、数ある施設の中から探すのは、なかなか検討がつかないもの。そこで参考になるのが入所待機者数です。設備やスタッフの質など、条件のよい施設はおのずと入居希望者が殺到します。「行列ができている店はおいしい」という飲食店選びのポイントと同じです。

また、施設が開催している見学会などにこまめに参加することもおすすめです。スタッフの雰囲気、掃除が行き届いた清潔な環境、そして、入居者の身だしなみもチェックのポイントとなります。

さらによいのは、そういった施設選びを、自分自身が若く健康なうちに行なっておくことです。今は介護する立場でも、いずれは介護される側になる可能性は決して低くないはずです。自分が最後に世話になりたいと思う施設を自分で決めて、周囲に伝えられるよう準備しておくとよいでしょう。

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