認知症いろいろ・看護もいろいろ
認知症は病気ではなく症状、いや病気。病気じゃないから看護、介護の力でしょ。じゃあ、なぜ抗認知症薬があるの、病気でしょ。あらあら、皆さん人のせいにして文句ばかり・・・
それだけ、認知症の治療、ケアは難しいのです。医療も介護も力合わせましょう。そうすれば皆がハッピーになります。
看護の仕事場もいろいろあります。病院、クリニック、会社、施設など・・・まだまだいろいろあります。「病院は治療をするところ」「施設は生活を守るところ」といわれています。確かにそうかもしれません。
私は施設看護を長くやっていますが、私の経験から病院と施設の看護の違いと、私も最近病気で2週間程入院しましてその時の体験談も交えながらお話ししたいと思います。キーワードは認知症看護?ケア?なんだろ?
病院は治療をするところ
昨年、健康診断で引っ掛かりまして、まずは2泊3日で検査入院をしました。
まずはコロナの検査をして、もろもろの書類を渡されてサインをして・・・
あれ?これって・・・拘束の同意書でした。えっ?私にも???
病棟看護師さんに聞くと、せん妄は年齢を問わない、入院中何が起こるかわからないですからと言われました。
確かに治療のために、生命を守るため医療を提供するのが病院です。治療の妨げになる行為は命の危機です。点滴、尿の管、酸素、ドレナージなど自己抜去(自分で抜いてしまう)などです。ミトン、体幹抑制、抑制着、4点柵など・・・ベッドからの転落防止もあります。
検査入院後、病名がわかり2週間入院治療することになりました。
この時、となりのベッドの方が夜間せん妄で大声をあげ、ベッド柵をガタガタさせ、蹴り、そう若い入院患者さんでした。いつベッドから転落するかハラハラしていました。
病棟の看護師さんはバタバタしています。朝からバイタル測定をして点滴を繋いで、投薬をして、創傷の処置をして、ナースコール対応をして本当に目まぐるしい。ナースコールの使い方がわからなくて「すいませーん!!助けてください!!」と大声を出す高齢女性、「家に帰る」と怒ってしまう高齢男性。
患者さんは話を聞いて欲しい、看護師は話を聞いてあげたいけど時間がとれない。
病院にも介護職さんがいれば、患者さんにも看護師さんにもメリットがあるのではないかと思ってしまいました。確かコロナの爆発的な感染者で看護が逼迫した時、介護職を雇入れした病院もありましたね。
安全に治療は受けてほしいと思いますし、願いますが。
ご本人がなぜ入院したかもわからず治療のために拘束されて、薬を盛られてしまう。
でもそれは急性期で命の危機を守るためです。入院中、ナースステーションから一番離れた大部屋でした。毎晩、夜に「すみません、すみません」と声を出される高齢者女性、余計なおせっかいだったかもしれませんが、お顔を見に行って「看護師さん来ますからね」とナースコールを押して、そそくさと自分のベッドに戻っていました。
「病院は治療をするところ」です。治療を安全に受けてもらい、早く治ってほしいと医療職は願います。
施設は生活を守るところ
施設もいろいろあります。
24時間看護師の配置をしているところ、日中のみの配置しかしていない施設。
24時間配置だとかなり医療依存度が高い、病院と同じような医療が受けられると思われるかもしれませんが、そうではありません。
病気になっても病院に受診しなくても施設で診てくれるとも思われがちですが、ケースバイケースです。施設にはだいたい訪問診療医が月2回程度往診で来訪します。
身体の様子などをご本人、施設のスタッフなどに聞きながら、内服薬の処方をします。必要時には点滴をすることもありますが、継続的な点滴はしません。必要最低限の医療です。
施設に入居される方の背景は様々ではありますが、慢性疾患、癌の末期で治療を望まない、もしくは治療できない、それに認知症もあります。
20年程、施設看護に就いていますが、年々施設での緩和ケアと看取りを希望されるご家族は増えています。
看取りについてはまたの機会に書こうと思います。
施設は拘束できませんので元気になられれば点滴は自分で抜かれます。尿の管も同じくです。もう元気になったのだから嫌なことはしません。逆に怒り出されて大変になるのでしっかり口から水分を摂ってもらえればいいです。
「食べる」「寝る」「動ける」(トイレに行く)そして「笑う」を損なわないように、日々介護職さんと一緒にケアさせて頂いています。
毎日、てんやわんやです。
「お風呂に入りたくない」「家に帰っていいですか」「ものを盗られた」「杖がなくなった」「お財布がなくなった」・・・etc
ものがなくなってしまうと、見つかるまで落ち着かないのは皆さんも同じですよね。一緒に見つかるまで探します。
義歯(入れ歯)もよくなくなります。早くみつけないとご飯がたべられない!必死に探します、だいだいテッシュにくるんでゴミ箱に入っているケースが多いですね。
一番驚いたのは、スーパーでよく売っているビン詰めの海苔の佃煮がありますよね。それが大好きで毎回、白飯にのっけて食べられていて・・・・はい、海苔の佃煮のビンの中に義歯が入っていました。
「ごはんですよー」が「入れ歯ですよー」になっていました(笑)。
もう、また紛失したの!嫌になっちゃうよ!と思いながら探すこともあると思いますが、見つけた時の達成感は凄いですよ。そして一緒に笑えますから。
最近は「名探偵コナン」と呼ばれています!!(笑)
「施設は生活を守るところ」です。
楽しいことをどんどん増やしましょう。
まとめ
最近は入院先の看護師さん、担当医の先生からの連絡も多く頂きます。入院による環境変化でせん妄、認知症症状が悪化することがあります。早期退院を最初からお話するケースもありますし、落ち着かないから早く迎えにきてほしい、いつなら大丈夫ですかと日程調整の連絡がくることもあります。すぐに帰ってきてもらえるように調整します。
病院との連携も日頃から上手くとれていると、相談も入退院もスムーズに行えます。地域連携も看護の肝かもしれませんね。
日本認知症研究会副代表。看護学校卒業後、内科外来、透析室勤務を経て訪問看護ステーションにて3年間在宅医療に関わり、その後、介護付き有料老人ホームの看護職員として長年務められる。多くの認知症の入居者に携わるうちに、認知症について興味を持ち看護師として貢献できる認知症ケアについて学ばれる。周囲の仲間からは「大将」の愛称で親しまれ、医師主体の研究会の代表を務められた他、中国、イタリアで開催された学会でのご講演など多方面で活躍されている。