認知症いろいろ・病型もいろいろ
認知症と一言でいってもいろいろ病型があります。ここでは4大認知症と言われている4つの型についてお話します。脳の画像検査などからではなく、生活の中からみられるキャラクター分類でお話ししていきます。
アルツハイマー型認知症
とにかく明るく元気。取り繕いが上手く作話はまるでホントの話。
道に迷う、徘徊、短期記憶障害強い
ある日、おしぼりたたみ(施設で使う顔清拭用)をお二人の女性の方にお願いしました。快く引き受けてくださり作り方の説明をして私も途中参加しました。
**お二人の会話**
「これは、ホテルに納品するものだから、班長さんが摂りに来るから急いで」
「ほら、班長さんが来たわよ」
「一袋で100円だから、沢山作らないと」
通りすがりの介護士さんと目が合い会釈する。
その後もいろんな作話で盛り上がりながら、おしぼりを作りました。
・アルツハイマー型認知症は食事前にテーブルを拭いていると
「いやいや、女の私がやらなきゃね。」と声をかけてくれる。
・アルツハイマー型認知症は食事をどれからたべてよいかわからなくなることが多い ため、沢山の皿は使わず、お子様ランチのようなワンプレートの皿に盛る。また白米は白なので、わかりやすいようにお椀などの色がついたものによそう。
レビー小体型認知症
元気がない、声か小さい、身体の傾きがある。
小刻み歩行、すり足とパーキンソンと症状が似ている。
幻覚、薬物過敏あり。
急な意識消失もみられるが、すぐに意識取り戻す。
真面目な方に多いような気がします。
学校の先生、医師、真面目なサラリーマンで勤務終了後は真っ直ぐ帰宅される方。
薬物過敏は皆さんも知っておいた方がよいです。
市販の風邪薬で3日間、昏々と眠られた方もいらっしゃいました。
急な意識消失・・・これも知らないとびっくりします。
明け方、部屋から出てきて、廊下を歩き、食堂の椅子に座られた途端、意識消失さ れた高齢男性。直ぐに介護職員が救急車を呼びました。私は通勤中で、介護職員から救急車を要請したと連絡をもらいました。
その後、到着した救急隊の方から連絡あり、
「意識もどりました。今、歌を唄われていますが運びますか?」
電話口の先で聞きなれた歌声が聞こえてきます。・・・いつもの「きよしこの夜」「とりあえず、運んでもらってよいですか?」
病院に運び検査を受けるが問題ありませんでした。
ご家族に今回のことと、以前にも同じような症状がなかったかお聞きすると「お話してなかったのですが・・・駅のホームや外出先で急に意識消失を起こし、私の覚えている範囲では4回程、救急車で運ばれました。でも全て問題なしとのことでした。」
はやく教えて欲しかった・・・・・でも、わかってよかったです。その後も2回程、同じように繰り返されましたが救急車を呼ぶことはありませんでした。
・レビー小体型認知症は、食事前にテーブルを拭いていると、ボーっと見ているか、目を閉じて眠られてしまう。
・レビー小体型認知症は食事量にはムラがみられる。また身体の傾きがみられるため、座位保持、食事を食べる姿勢には気を付けましょう。
前頭側頭葉型認知症(ピック病)
怒りやすい、暴言、暴力あり。甘いもの好き、脱抑制、そのため万引きなどの行為もみられる。
こだわりがあり、例えば同じ道を選ぶため迷子にはならない。
足組み、腕組み、横柄な態度。家(独居)はゴミ屋敷が多い。
ピック病と診断された男性。
毎日、「散歩いこうよ。」「チョコレート頂戴よ。」が口癖。
散歩に同行する。私は後ろからついていく、もくもくと歩かれる。
毎日、同じ道、道を変更することはなく、迷うこともなく、帰ることができる。
雨の日も風の日も散歩には行かれる。
ある日、私は昼食を持ってくるのを忘れて、近くのコンビニへ昼食を買いに行くことにしました。ちょうど「散歩行こうよ」と来られたので一緒に散歩にコンビニに行くことにしました。
「お腹がすいてるなら、何か買っていきますか?」
「いいよ。お昼食べたから・・・」
確かに既に昼食は食べ終わられていました。
コンビニにつき、サンドイッチを食べようと思い、少しだけ目を離したのですが
振り返った瞬間、おいしそうにソフトクリームを食べている彼の姿が、目に入ってきました。コンビニの店員さんとは知り合いだったので事情を話、お金を払って帰路につきました。帰り道、本当においしそうにソフトクリームを食べられていました。
今日はコンビニまでも散歩だから、「散歩」は行かなくていいかなと思っていましたが、さすが、こだわりの方、その後同じ散歩コースを歩かないと帰れませんでした。
・ピック病は食事前のテーブル拭きをしていると、急に怒りだす。不機嫌な顔をされます。
・ピック病は食事をかきこんで食べられることが多いため、食事の形態には気をつけて窒息されないように様子みましょう。エネルギーのある方が多いので、一口量の調節をするためにティースプーンを提案することもありますが、イライラされて上手くいかないケースもあります。
脳血管障害型認知症
脳梗塞などの脳血管障害を起こされた方です。麻痺、嚥下障害、呂律が回らない、感情失禁といって感情のコントロールが難しい情動失禁ともいう。
ご主人が入所されており、毎日毎日タコ焼きを買って差し入れに通われていた奥さん。家でひとりで倒れていたところを訪ねてきた親戚の人に発見され、救急搬送された。急性硬膜下血腫と肋骨骨折、手術しないと危ないと医師からの話はあったが
ご家族は高齢だからと手術は希望されなかった。
しかし奇跡的に意識も取り戻し、食事もご自分でも食べられるようになり、歩くことはできなくなって車椅子になってしまったため、ご主人と一緒に入所することになった。
「お父さんより、先に死ねないでしょ!」そう言われていた。
ご主人とは別部屋だったのだか、夜に這ってご主人の部屋に行き、ご主人の首をしめる、暴力をふるうことがあった。温厚な奥さんでしたが、人が変わってしまった感じになってしまった。
次の機会にこの方のお話をします。
その後、落ち着かれて、おっしゃっていたように、ご主人をお看取りされて10年、のんびり過ごされました。
・脳血管型認知症は脳血管障害による嚥下機能低下もみられるため、やはり食事介助が必要になった場合は、当たり前ではあるが必ず飲み込みを確認して介助することが大切です。
まとめ
認知症は年齢を重ねるごとにいろんな症状が被ってきます。アルツハイマー型認知症にレビー小体型認知症が被ってそれにピック病が被っていきます。更に脳梗塞などが被ってくるケースもあります。
この4大認知症のキャラクターを知っておくとお役にたつのではないでしょうか。
日本認知症研究会副代表。看護学校卒業後、内科外来、透析室勤務を経て訪問看護ステーションにて3年間在宅医療に関わり、その後、介護付き有料老人ホームの看護職員として長年務められる。多くの認知症の入居者に携わるうちに、認知症について興味を持ち看護師として貢献できる認知症ケアについて学ばれる。周囲の仲間からは「大将」の愛称で親しまれ、医師主体の研究会の代表を務められた他、中国、イタリアで開催された学会でのご講演など多方面で活躍されている。