睡眠時無呼吸症候群(SAS)とうつ・認知症
Aさんは、自殺企図のため入院治療を受け退院しましたが復職できずに当院を受診。
Bさんは、10年間 精神科病院に通院加療されましたが、まだ半日勤務しかできず当院を受診。
Cさんは、5年前から他県の心療内科に通院して、転勤のため当院を受診。
3名の共通点
3名の共通点は、向精神薬の多剤大量服用、肥満、いびきでした。検査結果では、脂肪肝に加え、多血症(赤血球・ヘモグロビン高値)が認められました。睡眠専門外来での検査結果によると、全員、睡眠時無呼吸症候群(SAS)でした。
SASでは、睡眠不足になり、昼間の眠気、注意・集中力低下、意欲低下、抑うつなどの悪化をきたします。
そこで、CPAP(持続陽圧呼吸療法:写真参照)治療により、3名全員、うつ状態は改善しました。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と認知機能障害
一方、SASと認知機能障害は、いずれも加齢とともに増加し、SASがある場合、加齢に関連した認知機能障害をきたしやすくなります。
認知症におけるSASの合併は、レビー小体型認知症の35~60%、アルツハイマー型認知症の30~70%、それぞれ認められ、健常者と比べて2.2倍~16.5倍の発症率で、極めて高値であることがわかります。
また、米国の研究では、SAS症状がある人は、ない人に比べて軽度認知障害が平均13年、アルツハイマー型認知症が平均5年、それぞれ早く発症しました。
さらに、重症SASに対する3年間のCPAP治療により認知機能の指標であるミニメンタルテストの点数の低下が抑制されたことなどが報告されています。
したがって、認知症予防・治療のためには、SASの診断・治療が非常に重要だといえます。
宮崎医科大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構菊池病院(熊本)元院長。熊本県の認知症中核病院の専門医として、熊本県全域から訪れる多くの認知症患者さんを診療され、平成30年に熊本駅前木もれびの森心療内科精神科を開院。食事・サプリメント指導により患者さんの栄養状態を改善し、お薬の量を最小限にされ、精神面の安定・改善をめざす、栄養療法を主体とした副作用の少ない「やさしい医療」を実践されている。