笠間には食を支える仕組みがあった!
R2年6月に「この笠間で口から食べるを支えたい!」と勝手に決意したものの、何から始めればよいのか、さっぱりわかりませんでした。私自身はVE(嚥下造影)やVF(嚥下内視鏡)といった専門的な検査を日常的に行う耳鼻科医でもなければ、口の中を診る歯科医でもありません。
摂食嚥下関連の本には、食べるという行為を支えるには、多くの診療科や職種が関わらなくてはダメだ、と書いてありました。地域の中で摂食嚥下のサポートチームをつくらなくては、と。
塙先生との出会い
私の住む笠間に、一緒に動いてくれるような人はいるのか?途方に暮れた私は、笠間市の健康増進課に電話で助けを求めました。
「この地域で、食のサポートに取り組んでいる方がいれば教えて下さい。」
すると佐伯さんという方が、塙歯科医院の塙章一先生と由紀子先生を紹介して下さったのです。
少し大げさですが…運命の出会いだと思っています。
おそるおそる塙歯科医院に電話をかけた私を、塙先生ご夫妻はとにかく温かく歓迎して下さり、以来1-2ヶ月に1回の頻度で診療後に塙先生宅に押しかけては食事をご馳走になり、ああでもないこうでもないと話をするという不定期なミーティングが開催されることになりました。
「食改さん」と「食文化研究会」
塙先生に教えて頂きましたが、笠間には食に関してかなり積極的な取り組みがされていたのです。
「食改さん」(食生活改善推進員)という立場の方がいます。
旧笠間市の食改さんは、保健センターの佐伯さんが15年をかけてコミュニケーションをとり信頼関係を積み上げてきた組織です。
保健センターで9地区の代表を集めて佐伯さんが料理などを指導し、そこに参加した代表は自分の地域に帰って同じプログラムを地域の食改さんへ伝え、さらに食改さんが地元の人たちに伝えていくというシステムを作り上げていました。
また塙先生ご夫妻は、1997年から食文化研究会として活動をされています。歯科医師会が主導となり、食を切り口として多職種連携、「楽食」という食のバリアフリー化へなどの活動をされています。塙先生が活動をする上で、食改さんのシステムがあったためにスムーズにいったとお聞きしました。
食文化研究会の活動)
- ・機能を育てる食育
- ・楽食
- ・人にやさしい器
- ・パッククッキング
- ・発音エクササイズ
- ・弁当プロジェクト(かむかむ弁当)
2000年の茨城新聞で、笠間市の取り組みが取り上げられています。
塙先生をはじめとする食文化研究会の取り組みは、すごいです。
脳梗塞などで手が不自由な方でも使いやすい食器を笠間の陶芸家さんが作ったり、糖尿病の方でも楽しめるフレンチのコースを提供するレストランがあったり。医療という枠組を超えて文化の領域にまで越境する視座の高さ!時代の先の先をいく、斬新な取り組み。
この火を消してはもったいない!こんな素晴らしい先生方と巡り合い、仲間に加えて頂けるというアドバンテージを最大限に活用して、私も頑張っていきます。
自治医科大学医学部卒業後、茨城県の地域医療に従事され、平成29年にあやか内科クリニックを開院。大病院に紹介しても症状が改善しない患者さん、介護で疲れ切った家族を笑顔にしたいという思いで、公立病院勤務中にコウノメソッドを開始し、劇的に改善する患者さんを見て、この方法を全国に広げるための活動をはじめられる。「認知症にならない」予防と「認知症になっても大丈夫」な診療・環境づくりの両輪が整う社会を目指されている。