降圧剤の弊害
血圧が130以上だと、年齢に関係なく降圧剤を処方する先生がいらっしゃいます。以前、収縮期血圧は、年齢+90(85歳であれば、85+90=175)が適切といわれていました。高齢者になると、動脈硬化が徐々に進行していきますので、ある程度の血圧がないと、脳血流が低下して、脳に十分な栄養を供給できなくなり、かえって脳梗塞のリスクになるといわれています。
90代女性
初診時、「気分が沈む、眠れない、食欲がない、頭がボーッとする、昨日のことが思い出せない、脚がつる、喉が詰まった嫌な感じ」と愁訴が多彩でした。降圧剤を中止して、マグネシウム浴・栄養指導により、すべての愁訴が改善しました。「非常に元気になった」とご本人もご家族も大喜びです。
80代男性
降圧剤を服用して、血圧はだいたい120/70程度。80代にしては低過ぎます。かかりつけ医に、降圧剤中止を依頼しましたが、処方は継続されました。そこで、家族が自主的に降圧剤を中止したところ、会話が成り立つようになり、自分の気持ちを言語化するようになりました。認知症後期高齢者への漫然な降圧剤処方には注意すべきです。
レビー小体型認知症の90代女性
スタチン・降圧剤中止、人参養栄湯追加により、表情が明るく、拒絶していたパズルに取り組み、掃除もされるようになりました。すばらしい改善です。薬剤過感受性のレビー小体型認知症では、減薬が必須です。
まとめ
最近、降圧剤を中止して、元気になったり、イライラがなくなったり、身体症状が改善したり、もの忘れが改善したりする方々を、よく見かけるようになりました。
高齢者で降圧剤を服用して、収縮期血圧が130以下の場合は、一旦降圧剤を止めて経過をみるべきだと思います。
宮崎医科大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構菊池病院(熊本)元院長。熊本県の認知症中核病院の専門医として、熊本県全域から訪れる多くの認知症患者さんを診療され、平成30年に熊本駅前木もれびの森心療内科精神科を開院。食事・サプリメント指導により患者さんの栄養状態を改善し、お薬の量を最小限にされ、精神面の安定・改善をめざす、栄養療法を主体とした副作用の少ない「やさしい医療」を実践されている。