もりの医院
東照代副院長インタビュー

投稿日:2024.08.30

1973年に徳島市昭和町に開業した医療法人青志会「もりの医院」は、森野訓明院長が半世紀にわたり、東洋医学も取り入れた診療に取り組んできた。東照代(ひがし・てるよ)先生は、実の娘であり、1998年に愛媛大学医学部を卒業し、徳島大学第一内科に入局。その後、徳島県立中央病院での研修を経て徳島赤十字病院医師、徳島県立中央病院消化器科医師となる。2004年末、結婚を機に退職して医療法人青志会に医師として勤務。現在は3児の母でありながら、もりの医院の副院長を務めている。東洋医学をはじめ栄養医学、点滴療法など多彩なアプローチで全人的医療を続ける東副院長に、認知症医療への取り組みなどを伺った。(取材日2024年7月21日)

もくじ
こころや体のことを何でも相談できる「かかりつけ医」
祖母の認知症発症が成長の転機となった
こころと体を全人的な視野で診れる医者でありたい

こころや体のことを何でも相談できる「かかりつけ医」

Q.医師を志した動機をお聞かせください。

私が生まれる1年前に父親が現在の徳島市内に「もりの医院」を開業しました。医師になる道もあるかもしれないとなんとなく思っていたように記憶していますが、私自身は英語が好きで、高校2年生までは英語の先生になろうかなとも思っていました。大学の受験先を決める段階になって「医学部はどうか?」と周囲からの勧めもありその流れにのり受験しました。医学部の道は父の背中をみて育った私にとっては目指したい道でしたので、今になって思うと高校時代に頑張ってみてよかったです。

Q.もりの医院へ入られるまでの経緯をお聞かせください。

愛媛大学の医学部を卒業し医師になってからは、徳島大学の第一内科に入局しました。当時の第一内科は消化器科、血液内科、内分泌内科、神経内科、循環器内科などたくさんの領域の勉強ができる医局でした。内科医になるにあたって、様々な勉強ができる環境が揃っていましたので入局させていただきました。実は、子どもが大好きなので小児科医になりたいという気持ちもありましたが、悩んだ末に断念。徳島県立中央病院で他科をローテートする際に、小児科と外科と麻酔科を回ることにしました。
その後、徳島赤十字病院で、胃カメラや大腸カメラの検査や処置、消化器や肝臓の疾患、内分泌疾患、血液内科での血液癌の骨髄移植のサポートなどを勉強させていただき、外科系の先生にも大切にしていただきました。最終的には徳島県立中央病院の消化器科を経て、出産と育児のために実家であるもりの医院に戻りました。
それにしても、本当にたくさんの先輩の先生方にお世話になれたことで、今の自分があるとつくづく思います。その当時の先生方の志が非常に高く、素敵な先生ばかりで、人にも恵まれていたなあと、思い出すだけで幸せな気持ちが沸き上がります。

Q.森野院長はどのようなお医者さんですか?

父親の森野訓明院長は、1965年に徳島大学医学部を卒業しました。当時は四国で徳島大学にしか医学部がなかった時代で、実は大学で主席だったと聞いております。卒業して放射線科に入局しましたが、その理由を「全部の科の患者さんを診られるから」と語っていました。32歳で「もりの医院」を開業。開業当初から東洋医学を取り入れていました。漢方薬の処方や鍼、マッサージなどを取り入れ、西洋医学的な治療だけでは治りきらない慢性の関節痛や痺れなどの診断と治療を行っています。若いころから自身の頸椎の異常があったことで頭痛で悩み、いろいろ勉強したと聞いております。現在は患者様の体に触れることで筋肉や骨の異常部位を当てて治すことが得意で、有名スポーツ選手をはじめ、父には多くのファンがいます。

祖母の認知症発症が成長の転機となった

Q.このクリニックの特長を教えてください。

父(院長)は東洋医学に基づいた腰痛、膝関節痛、痺れなどの治療を行っているのが一つの特長で、主に漢方内科、リハビリテーション科、消化器内科を担当しています。私(副院長)は同じく漢方内科、消化器内科に加えて、老年神経内科(認知症外来)、小児心療内科、児童精神科(こどものこころ診療部)、美容皮膚科を担当しています。父と私は、予防医療を含め体に優しい医療を目指す点では共通しているのですが、私が、がん患者様の闘病サポート、栄養医学、点滴療法、サプリメントを使った認知症治療、心療内科的な分野などにフィールドを広げているのがもう一つの特長です。
どうしても保険診療で治せる範囲は限られる場合がございますので、患者さんやそのご家族と話し合いながら、予防などの自由診療も行うようになりました。例えば検査については、遅延型アレルギー検査、有害重金属・ミネラル検査、コリバクチン検査、エクオール検査、唾液によるがんリスク検査(サリバチェッカー)など患者様の健康を守るための革新的な検査を多数導入しています。

Q.認知症の治療で心がけていることは何ですか?

私の母方の祖母が認知症を発症した2012年頃、祖母に抗認知症薬のアリセプトを処方したところ体調が悪くなりました。倦怠感がでて食事が摂れなくなったのです。「どういうことなのか?何かできることはないのか?」と思った私は、徳島市内の医学書店で認知症の本を読み漁りました。そのとき出会ったのが、河野和彦先生が書かれたコウノメソッドの本でした。認知症の治療法について、非常にわかりやすく書いてあったのでこれをやってみようと思い、認知症治療に本格的に取り組むようになりました。
祖母はアリセプトをやめて、フェルガードというサプリメントを飲み始めました。何がどうなったか半信半疑でしたが、体調不良は改善しました。一方でほかの患者さんにもフェルガードを試すようになり、その当初から、サプリメントなのに、数週間で良い変化がでる患者様と治療を共にさせていただけることができたのです。「え?サプリメントなのに・・これは、本当にいいんじゃない?」と思ったのを覚えています。また、抗認知症薬の使い方もテクニックがあると自分なりにもわかりました。半量から徐々に増やしていったり、無理に内服させないこともありますし、認知症の方と会話したり、ご様子を見ていたら、お薬が必要か?お薬があわない方か?などもわかるようになってきました。

Q. サプリメントはどのようなものを使っていらっしゃいますか?

認知症の場合、基本はフェルガード100Mで、フェルガードLA、Mガードも使います。子どもの脳に関係するお悩みにはカーミン(フェルラ酸とα-GPCを主成分とする栄養補助食品)を使います。Mガードで耳鳴りが改善したケースもありました。そのほかエグノリジンS、プロルベイン、EPA・DHA、ロスマリン酸、マルチビタミンミネラルなど多彩なサプリメントを取り入れています。自費なのでコストの問題もあり、どなたにもお薦めできるわけではありませんが、もう一歩踏み込んだ改善策を求められる患者さんやご家族には役立っています。認知症の予防と治療には、抗認知症薬の少量投与や漢方薬(抑肝散など)だけでなく、サプリメントが役に立ちます。
余談ですが、1年ほど前から先進医療に認可されている超高流量水素の吸入療法を始め、著効例を経験しています。水素は子どもの脳にもいいことが臨床家的に実感しています。2024年7月から近赤外線療法を始め、会話のしやすさや新型コロナウイルス感染後の方にも効果がではじめました。

こころと体を全人的な視野で診れる医者でありたい

Q. 認知症以外で力を入れていらっしゃる診療科は何ですか?

がん患者様の闘病サポートや点滴療法でしょうか。手術や抗がん剤、放射線治療など標準治療を受けていらっしゃる方々が少しでも楽になれたり、笑顔でいられる時間を増やせるように、さまざまな予防や治療をさせていただいています。がんの進行度合いに合わせて標準治療との併用、再発予防、緩和ケアとの併用など、がん患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高めるお手伝いをしています。その一環として行われる点滴療法は、グルタチオン点滴、高濃度ビタミンC点滴、エナジー点滴、マイヤーズカクテル点滴などがございます。私自身は、リスクが少なく元気になれる可能性があるものを提供できるような診療内容を心がけながら、貴重な時間を共有させていただけることに感謝しております。

Q.「こどものこころ診療部」とはどのようなものですか?

小学生の子どもの保護者を対象とした育児相談を行っています。これは私自身が子どもが大好きだということ、育児で悩み反省し学んできたこと、関東の不登校支援チーム内で勉強したこと、親友の児童精神科の医師の助言、保護者サポートのボランティアをしてきたことなどの積み重ねで実現したものです。不登校などの問題は、様々な要因が関係しますので、体もこころもケアできる診療部として立ち上げました。
当院の特長は、お母様など、お子様の周囲の大人のサポートも可能である数少ないクリニックであること、心だけでなく分子栄養学も併用した身体的なサポートも行えることです。毎週相談が可能で、家庭や学校での状況等を詳細に共有できる場合であれば、8割程度が最短3ヵ月で方向性が決まったり、徐々に登校できはじめたりなどしております。まずは保護者様向けの育児相談(自費)を週1回、1~3ヵ月受けていただくことをお勧めします。また、ほとんどが口コミ経由で心療内科領域の受診相談が多くなり、他の医療機関様からも当院に心療内科 担当医先生、と書かれた紹介状をいただいたりで、心療内科希望の大人の方の受診がかなり増えてきましたので、大人のための心療内科も開設しました。

Q.認知症で受診する際の心構えはありますか? あと、どのようなクリニックでありたいと思っていらっしゃいますか?

副院長である私の外来は予約制となっていて、認知症の初診も予約が必要ですが、心構えなどは不要です。まずは、来院していただけるだけで感謝の気持ちでお迎えいたします。実際のところ、初診では30分以上の時間をかけた問診をすることがあり、可能なら初診時に簡単な知能検査を受けていただきます。ご本人の日常のご様子や他院で受けてきた治療内容も伺いたいので、メモをしてきてくださってもかまいません。抗認知症薬など西洋医学の説明を行いながら、フェルガードなどのサプリメントの説明も行います。ご本人もさることながら、ご家族が困っていないかも心配で、ご家族に「(体調は)大丈夫?寝られていますか?」「それはケアマネさんにも相談したほうがいいよ」「要介護度より重いみたいだから、区分変更を受けたほうがいいんじゃない?」など、いろいろと話していたら時間が長くなりがちな日もございます。最初からご家族のみの相談の場合は自費になりますが、最近は相談のみのことも増えてきました。認知症の方、とくにアルツハイマー型認知症の方を受診させるのは病識がないことで難渋することも少なくないのです。

日頃心がけていることといえば、「笑顔・感謝・絆」を念頭にということです。ご来院していただけることに感謝し、クリニックのFacebookにUPしている「笑いと笑顔の処方」も気にかけております。認知症のご家族やそれ以外の患者様でも、最近は、頑張りすぎ我慢しすぎで、いっぱいいっぱいになって受診される方が少なくありません。外来でお話を聞いている最中に涙、涙、涙で、診察しながらティッシュを探すことが増えてきました。そんな時こそ、最後は微笑んで帰っていただけるように頑張りたいと思います。
また、強い絆を意識し困ったらもりの医院へ行ってみようと思っていただけますよう、何でも相談できるかかりつけ医でありたいと思いながら、いつでも声をかけていただけるように両手を広げて診療してまいります。

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