アルツハイマー型認知症(ATD)の症状と経過
アルツハイマー型認知症(ATD:Alzheimer-type dementia)は一般的に進行がゆるやかで、老人斑が現れてから、およそ20年を経て発病します。記憶機能などの高次脳機能が徐々に損なわれていき、進行すると、自立した生活が困難になります。ここでは、アルツハイマー型認知症(ATD)がたどる、おおまかな経過を紹介します。
取り繕い反応や物盗られ妄想はアルツハイマー型認知症(ATD)特有の症状
アルツハイマー型認知症(ATD)の経過を大きく分けると、初期・中期・末期の3段階があります。多くは記憶障害からはじまり、徐々に生活機能が低下していきますが、病気だという自覚(病識)はありません。特有の症状としては、記憶障害を作話(さくわ)でごまかす「取り繕い反応」や、財布などを盗まれたといって騒ぐ「物盗られ妄想」などが知られています。
中期に入ると、視覚や聴覚、触覚といった感覚機能に異常がないにもかかわらず、対象を正しく認識できなくなる「失認(しつにん)」、手足の麻痺などがないにもかかわらず、簡単な日常動作ができなくなる「失行(しっこう)」、単語や言葉が出てこない「失語(しつご)」などの高機能障害も現れます。
末期は知的機能がほぼ失われ、寝たきりとなり、多くは肺炎で死に至ります。
アルツハイマー型認知症(ATD)の症状の進行
アルツハイマー型認知症(ATD)の場合、老人斑などの出現後、すぐに症状が出るわけではありません。軽い物忘れ程度の前段階を経て、慢性的に進行していきます。認知機能を表すMMSE(エムエムエスイー)スコアの低下とともに、さまざまな症状が現れます。早ければ4〜5年、長ければ10数年、平均8年ほどで死に至ります。65歳未満で発症する若年性の場合は、進行が急速で、5年ほどで末期に至ります。
MMSEとは
「MMSE:Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)」は、世界中で多く用いられている、記述式の認知症検査です。特にアルツハイマー型認知症(ATD)の疑いがある場合に多く用いられています。スコアは30点満点で、27〜30点は異常なし、22〜26点は軽度認知障害の疑いあり、21点以下は認知症の疑いが強いと評価します。MMSEだけで認知症だと断定することはできず、可能性がある場合は、その後、さらに詳しい検査や問診を行います。
日常生活動作から進行度を評価する「FAST(ファスト)分類」
アルツハイマー型認知症(ATD)の進行度を評価するスケールは、ほかにもあります。
以下で紹介する「FAST分類」は、日常生活動作がどのくらい障害されているかによって、進行度を7段階に分類します。