レビー小体型認知症(DLB)の症状と経過

投稿日:2023.06.08

レビー小体型認知症(DLB:dementia with Lewy bodies)は、記憶障害が軽度、あるいは初期には現れないこともあり、発症が見落とされやすい病気です。幻視や身体症状に注目し、早期に発見することが重要です。ここでは、レビー小体型認知症に現れる多彩な症状と、その経過を紹介します。さらに、アルツハイマー型の病変が共存するケース、前頭側頭型認知症(ピック病)の合併が疑われるケースについても解説します。

もくじ
レビー小体型認知症(DLB)の症状とその進行
アルツハイマー型の病変が共存するケース
前頭側頭型認知症(ピック病)の合併が疑われるケース

レビー小体型認知症(DLB)の症状とその進行

レビー小体型認知症(DLB)では、幻視、記憶障害、パーキンソニズムの3大症状を軸に、多様な周辺症状が現れます。また、一般的に進行がゆるやかなアルツハイマー型と比較すると、中期以降、進行が早くなります。平均罹病期間は7.28年ですが、3.3〜7.3年という報告もあります。下図は典型的なイメージで、症状の現れ方には個人差があります。

 

レビー小体型認知症(DLB)の3大症状

1.幻視
「知らない子どもが家の中にいる」「そこに犬がいる」など、人物や小動物、虫などのリアルな幻視が繰り返し現れます。幻視に反応した行動や妄想も現れてきます。夫や妻が偽物であるという妄想も多く見られます。

2.記憶障害
初期の記憶障害はアルツハイマー型より軽く、出ないこともあります。その一方で、空間の中の物の形や配置を正しく認識できない「視覚失認」のために、人物を認識できず、人と目を合わせない症状が目立ちます。

3.パーキンソニズム
レビー小体が脳幹に及ぶとパーキンソニズムも現れます。四肢の筋肉がこわばる「固縮(こしゅく)」、運動量が減り、動作が遅くなる「無動(むどう)」が中心で、パーキンソン病に多い手足の震え「振戦(しんせん)」は、まれです。固縮があれば、他者が患者の関節を動かしたときに抵抗を感じます。無動の場合は、動作が緩慢になり、まばたきが減少、表情も乏しくなります。転びやすくなるため、注意が必要です。

 

レビー小体型認知症(DLB)に特徴的な症状

認知機能や覚醒レベルの動揺
日にちや時間帯によって、意識がしっかりしているときと、ウトウトしているときがあります。それにともなって認知機能が高いときと、そうでないときの差が生じます。

レム睡眠時行動障害(RDB:アールディービー)
レビー小体型認知症(DLB)では、筋肉の緊張を抑える機能が低下し、レム睡眠(浅い眠り)時にも筋肉を動かすことができます。そのため、夢の内容に反応して、叫んだり暴れたりします。発症の数年〜数十年前からレム睡眠時行動障害が現れることもあり、前駆症状としても注目されています。

自律神経症状
自律神経系にもレビー小体が出現するため、初期のうちから、便秘や尿失禁、起立性低血圧(めまい、失神)などの自立神経系の症状も目立ちます。

アルツハイマー型の病変が共存するケース

レビー小体型認知症(DLB)は、幻視、記憶障害、パーキンソニズムが3大徴候です。しかしながら、症状の現れ方はさまざまで、3つの症状が明確に揃うとは限りません。

病理的にみても、レビー小体だけが現れる症例はまれで、ほとんどは老人斑や神経原線維変化などのアルツハイマー型の病変を伴います。特に、老人斑が広い範囲で合併します。

このことから、レビー小体を形成するαシヌクレインと老人斑を形成するアミロイドβは、相互に関連していると考えられます。レビー小体は、先に現れた老人斑を封じ込めるためにできるという仮説もあります。この仮説にもとづくと、アルツハイマー型(ATD)とパーキンソン病(PD)を両極にした流れの中に、レビー小体型の多様なタイプを位置づけることができます(下図参照)。

前頭側頭型認知症(ピック病)の合併が疑われるケース

レビー小体型認知症(DLB)の中には、前頭側頭型認知症(ピック病)が合併したかのようにみえるタイプがあります。怒りっぽくなる、わがままになるなど、前頭葉萎縮を示唆する人格変化が現れたときは、ピック病向けの治療薬の方が効果が出やすいという報告もあります。

 

レビー小体型から前頭側頭型への移行

1.レビー小体型認知症(DLB)
●見た目は、健康な老人脳と変わらない
脳の萎縮は軽く、健常な老人の脳とほぼ変わらないか、アルツハイマー型と健常老人の中間程度です。大脳皮質にレビー小体がみられ、老人斑も混在します。

2.フロンタルレビー
●前頭葉の萎縮が目立つが、症状はレビー小体型
前頭葉の萎縮がはっきり現れていますが、レビー小体型認知症(DLB)の症状だけで、人格変化などのピック病の症状はまだ現れていません。このうちの一部がレビー・ピックコンプレックスへ移行します。

3.レビー・ピックコンプレックス(LPC:エルピーシー)
●易怒(いど)、介護抵抗などピック病のような症状が発現
前頭葉の萎縮が進行し、側脳室(そくのうしつ)が丸く大きくなります。怒りっぽくなる、介護を嫌がるなど、ピック病のような症状がはっきりと現れてきます。

キーワード
あわせて読みたい
認知症の定義を知ろう
認知症の種類を知ろう
アルツハイマー型認知症(ATD)とは
アルツハイマー型認知症(ATD)の発症リスク
アルツハイマー型認知症(ATD)の診断基準
アルツハイマー型認知症(ATD)の症状と経過
レビー小体型認知症(DLB)とは

関連記事

みなさまの声を募集しています。

えんがわでは、認知症のご家庭の皆さまと、
認知症に向き合う高い志をもった
医療関係者と介護関係者をつなぎます。
認知症に関するお悩み、みんなで考えていきたいこと、
どんどんご意見をお聴かせ下さい。