検査結果の総合評価による診断

投稿日:2023.06.08

認知症に関する検査は多岐にわたり、それぞれの検査の結果を総合的に見て判断することが望まれます。その際、検査結果を数値化するスコア評価法が提唱されています。河野和彦氏による「コウノメソッド評価法」を解説します。

もくじ
検査結果を数値化し、臨床診断基準とする
アルツハイマースコア
レビースコア
ピックスコア

検査結果を数値化し、臨床診断基準とする

認知症の有無やタイプ別の診断確定は、本人や家族への問診、神経心理学的検査、画像検査、血液検査など、それぞれの検査結果を照らし合わせて最終的に判断します。原因疾患が多岐にわたったり、症状と画像検査結果の内容が合致しないということもしばしば起こり、正確な診断は死後の病理検査に委ねなければなりません。とはいえ、できるだけ確定診断を早く出すことで、早期の治療開始が実現したり、生活上の困難な部分をケアできるようになります。

アルツハイマースコア

アルツハイマー型認知症に多い所見を点数化した「アルツハイマースコア」というものがあります。これは河野和彦氏が唱える「コウノメソッド」によるもので、問診、HDS-R、CDT(時計描画検査)、画像検査の4つから構成され、“アルツハイマーらしさ”を検出するものです。基準点というものはなく、レビースコアと合わせて総合的に判断することが必要です。
■コウノメソッドの臨床テクニック
・問診の3項目のうち、上の2項目については家族への聞き取りが必要
・HDS-Rは総得点ではなく、失点項目にこそ注目
(特に、遅延再生、レビー小体型との識別に有用)
・下記のレビースコアが3点以上の場合は、アルツハイマー型の可能性を除外

レビースコア

問診と診察で構成されているレビースコアは、画像検査なしで評価できます。
上記は、アルツハイマー型とレビー小体型を識別するためのスコアになっていて、アルツハイマースコアとレビースコアを比較して、アルツハイマースコアの点数が高い場合でも、レビースコアで3点以上ならレビー小体型の可能性があります。また、2つのスコアの比較からレビー小体型の病理変化がどの段階にあるのかを判断できます。

■コウノメソッドの臨床テクニック
・問診は全て家族に行う
・幻視と妄想の区別がつかない場合、1.5点とする
・質問時に体の震えをチェック。徐々に震えが強くなるようであれば安静時振戦

ピックスコア

前頭側頭葉変性症の症状に見られる、万引きの既往、医師の前でも足を組んだり腕を組んだりする、食行動異常などがあれば、まずピックスコアから始めます。HDS-Rの診察途中で「どういう意味ですか?」などと尋ねてくる人に対しても、まずはピックスコアから始めることが推奨されます。
ピックスコアは、前頭側頭葉変性症(FTLD)を確定するためのスコアで、態度、診察、問診、画像検査の4つから構成されます。この場合、反社会的行動や食行動異常などの問診を本人に行うのは難しいため、家族に行います。ピックスコアが4点以上であれば、前頭側頭葉変性症と判断できます。
さらに、語義失語を調べるためのFTLD検出セットで、2項目以上できなければ意味性認知症であり、3項目以上できれば語義失語のあるピック病といえます。言葉の復唱ができないということであれば、進行性非流暢性失語の可能性が高そうです。

■コウノメソッドの臨床テクニック
・FTLD検出セットで2項目以上できなければ意味性認知症、ピックスコアが高いなら語義失語のあるピック病の可能性が高い
・重度の場合、病型にかかわらず答えられないため、進行前の病状を家族から聞き取る

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