画像検査②MRI検査、SPECT検査、PET検査

投稿日:2023.06.08

脳の形態を鮮明に映し出すことができるMRI検査は小さな変化も写り、認知症の診断においては、早期発見のための大事な検査です。一方、機能的な変化を見つけられるSPECT検査や、細胞代謝を調べるPET検査など、その役割と特徴を解説します。

もくじ
MRI検査で異常を視覚化・数値化することが可能
アルツハイマー型認知症のMRI画像
その他の認知症のMRI画像
SPECT検査による脳血流量の視覚化
アミロイドイメージング

MRI検査で異常を視覚化・数値化することが可能

人体を強い磁場の中に置いて、特定の電磁波をあてた時に生じる微弱な電気信号を画像化して診断するMRI(磁気共鳴画像診断法)。CTと比べて形態学的変化が鮮明に写ることから、さまざまな角度の断面を見ることができ、またエックス線を使用しないので被爆量の心配がないという特徴があります。たとえば、慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症との鑑別、クロイツフェルト・ヤコブ症と嗜銀顆粒性認知症の診断にも有効とされています。
さらに近年は、より診断がしやすくなるよう、健常者の平均的な脳の形と比較し、脳の萎縮の度合いや、その部位を数値化したり、視覚化できる解析ソフト・VSRAD(ヴィーエスラド)による画像処理も普及してきています。

MRIの画像処理方法には、撮像条件を変えて、主に4つのものが挙げられます。
・T1強調-髄液で満たされた部分(脳室、クモ膜下)が黒く写るため、脳全体の萎縮度を明確にするのに役立ちます。
・T2強調-コントラストがはっきり付くことが特徴です。脳梗塞や脳出血の病変と髄液が白く写ります。血管周囲腔の拡大があった場合も白く写ります。
・拡散強調、FLAIR(フレア)-特に、拡散強調は急性期の脳梗塞診断に役立ちます。脳梗塞や小さな虚血性病変の発見に優れています。
そのほか、MRIの装置を使って血管だけを画像化するMRA(MRアンギオグラフィ)という方法もあります。

またMRI検査の大きな特徴として、検査中電磁波を発するために起きる大きな音が検査を受ける人の負担になる場合があります。検査時間も30分~1時間ほどかかるので、前頭側頭型認知症のように、じっとしていることが困難な人には不向きな検査方法といえるでしょう。検査で注意すべき点として、入れ歯やペースメーカーなど、体に金属のある人は受けることができません。画像が鮮明なため、病的変化でないものまで写し出されてしまうこともあり、注意が必要です。

アルツハイマー型認知症のMRI画像

アルツハイマー型認知症のMRI画像には、画像解析シート・VSRADで解析すると、萎縮部分の程度が数値化・視覚化されます。健常者の平均的な脳の形と比較できるので、より客観的な診断が可能に。この解析ツールでのアルツハイマー型認知症の正診率は、80%をに達しています。
また、T1強調で画像処理をし、水平断で見た場合、海馬が萎縮しているため側脳室前角より側脳室後角がはっきり拡大しているのがわかります。これを冠状断で見た場合、前頭葉などの大脳皮質以上に、海馬が萎縮していることがわかります。形態が鮮明に写ることで、視覚化されるために発見することができます。

その他の認知症のMRI画像

そのほかの認知症のMRI画像における特徴を解説します。
・進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)-ハミングバードサインというものが見られます。これは、橋(きょう)などの部位が萎縮することで、ハチドリのくちばしに見えることから、このような名前がつきました。
・正常圧水頭症-脳が髄液に圧迫されることで、脳室が拡大します。外側溝の隙間が際立ち、頭頂部の脳溝が消失します。

SPECT検査による脳血流量の視覚化

脳の機能的な変化を調べるためのSPECT検査(スペクト検査)。正式名称を単一光子放射断層撮影と言い、放射性医薬品を使用して脳の血流状態を画像化します。検査方法は、静脈注射でガンマ線を放出する放射性医薬品を投与し、台に横たわった状態で回転型のガンマカメラで撮影します。この放射性医薬品は血流量の多いところに集まるため、血流量が多い部分と少ない部分を色分けして表示して診断に用います。画像解析ソフトには、3D、SSP(エスエスピー)、eZIS(イージス)などを使うことで、脳の血流が低下した部位を立体的に表示することができます。検査した人の脳を平均的な脳の形態に変換し、統計学的に脳血流量を数値化・視覚化して判断します。類似検査にPET検査がありますが、SPECT検査は健康保険も適用され、実施できる施設が多く、広く普及しています。
SPECT検査では、アルツハイマー型認知症の場合、MCI(エムシーアイ/経度認知症等)の段階で特定の部位に血流低下像が見られるため、早期発見に大いに役立ちます。それ以外のタイプの認知症も、脳の萎縮前に特徴のある血流低下が起こることが多いため、診断に有効的な検査と言えます。
一方、レビー小体型認知症ではSPECT装置を利用して、MIBG心筋シンチグラフィ検査が行われます。これは検査用薬剤のMIBGを使い、心臓をSPECT装置で撮影する方法です。レビー小体型で生じる交感神経障害の有無を調べることで、約80%の確率で確定診断を行うことができます。しかしながら、これは健康保険適用外検査になるため、診断が困難な場合にのみ使用されることが多いです。

アミロイドイメージング

陽電子放射断層法、いわゆるPET(ペット)検査は細胞の代謝を調べるもので、放射性物質を含む特殊な薬剤を体内に注入し、細胞から放出される陽電子を画像化して検査する方法です。この検査では脳の糖代謝を調べ、活動性が低下している部位を見つけ、認知症の早期発見やタイプ診断に役立てます。
PET検査の主な手法として、FDG-PET(エフディージーペット)検査があります。ブドウ糖に類似したFDGという構造の薬に放射性同位元素を加えて静脈に注射し、PET検査を行います。すると、糖代謝が高い部分が赤く色づき、糖代謝が低く脳機能が低下している部分が青く示されます。
この検査では、アルツハイマー型認知症の場合、側頭頂葉部分の機能が低下し、レビー小体型認知症では後頭葉と側頭頭頂葉の機能が低下。前頭側頭葉変性症では、前頭側頭葉の機能が低下します。
他にもPET検査の種類にアミロイドイメージング(アミロイドPET)検査があります。これはアミロイドβ(ベータ)の沈着状態を画像化したもので、認知症との関係を示します。画像では赤みの強い部分がアミロイドβの沈着量が多いことを表しており、アルツハイマー型認知症の早期発見などに有効です。また、軽度認知症でアミロイドPET検査が陽性だった人の約80%がアルツハイマー型認知症に移行したという研究結果もあります。とはいえ、アミロイドPET検査で陽性だった人が必ずしもアルツハイマー型の発症というわけではなく、健常者でもアミロイドPET陽性は20~30%いるといわれています。PET検査は未だ日本では健康保険適用外であり、機器自体も高額なため、実施できる施設が限られているという実情があります。

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