その他の認知症の薬物治療

投稿日:2023.06.08

アルツハイマー型認知症のような主要な認知症以外は、まだまだ薬物治療の研究が進んでいるとはいえない状況です。しかしながら、河野和彦氏が唱えるコウノメソッドでは、主要な認知症以外でも、推奨する薬剤が確立されつつあります。その内容をみていきましょう。

もくじ
一般的な薬物治療の場合
コウノメソッド治療薬剤

一般的な薬物治療の場合

昨今、診断技術の向上や治療法の進歩によって、治療可能な認知症がわかってきました。

■回復可能な認知症

・正常圧水頭症―髄液が過剰になってしまい、脳が圧迫されて起こります。

・慢性硬膜下血腫―頭部の外傷によって、くも膜と硬膜の間に血腫ができ、脳が圧迫されてしまいます。

・甲状腺機能低下症―集中力や活動性、記銘性が低下してしまいます。

上記のような全身疾患が要因の場合は、その疾患の治療をすることで、認知症の回復も可能です。

 

さらに、最近ではアルツハイマー型認知症など主要な変性疾患の治療も、認知機能改善薬によって、進化が見られています。

一方、それ以外の変性疾患においては、治療法がまだ見つかっていないものも多く、有効性は低いながらも抗精神病薬が使用されています。手の脱力から症状があらわれ、やがて全身の筋肉が萎縮してしまう筋萎縮性側索硬化症にも、未だ有効な治療法は確立されておらず、対処療法になっています。

 

<ガイドラインの推奨薬剤&対処法>

■大脳皮質基底核変性症(CBD)

・非定型抗精神病薬やパーキンソン症候群治療薬が用いられるが、有用性は低い。

・コリンエステラーゼ阻害薬には有用性があるとされている。しかしながら、エビデンスはない。

 

■進行性核上性麻痺(PSP)

・エビデンスのある薬剤はない。そのため、有用な治療法は確立されていない。

①コリンエステラーゼ阻害薬

②三環系抗うつ薬

③パーキンソン症候群治療薬のアマンタジン

①~③が用いられている

 

■ハンチントン病(HD)

・うつ、不安、易刺激性などの精神症状に有効性が示されている。

―非定型抗精神病薬のオランザピン、リスペリドン

・異常行動に有効性が示されている。

―クエチアピン

 

■クロツフェルト・ヤコブ病(CJD)

・治療抵抗性が強く、確立された治療法はない。

①抗マラリヤ薬

②神経細胞保護薬

③中枢性鎮痛薬

①~③は候補薬としてあげられている。

・原因となっているプリオンタンパクを抑え、低分子化合物、抗プリオン抗体については研究中となっている。

コウノメソッド治療薬剤

コウノメソッドで提唱しているのは、
「難治性の変性疾患でも、症状を重視するコウノメソッドの考え方は同様である。症状に応じて、きめこまかく処方することで、陽性症状の鎮静化とともに嚥下や歩行などの生活機能を改善する。進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症、レビー・ピックコンプレックスには、抑制系薬剤のクロルプロマジンや、興奮作用が弱いリバスチグミンが第一選択薬となる」
「フェルラ酸含有食品も有効だ。認知症の原因となる難病の多系統萎縮症にも効果が期待できる。製品ごとに強弱があるが、陽性症状が強ければ弱を、そうでなければ強を選択する」。(『せんぶわかる認知症の事典』河野和彦氏監修から引用)。

 

<コウノメソッドにおける推奨薬剤>

■クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)

・せん妄には抑肝散が有効。

・シチコリン注射、抗てんかん薬、リバスチグミン、フェルラ酸含有食品などの効果にも期待。

 

■嗜銀顆粒性認知症(AGD)

・認知機能改善薬を低用量で用いる。

・陽性症状が強い場合、定型抗精神病薬のクロルプロマジンを投与。

・フェルラ酸含有食品も有効。

 

■石灰化をともなうびまん性神経原線維変化病

・フェルラ酸含有食品(弱)で著しい効果を示す場合もある。

・リバスチグミン、パーキンソン症候群治療薬、クロルプロマジンなどで対応。

 

【レビー・ピック関連疾患】

■レビー・ピックコンプレックス(LPC)

・レビースコアが高い場合

―リバスチグミン

―抑肝散(漢方薬)

―セレネース

・ピックスコアが高い場合

―ウインタミン

―フェルラ酸含有食品(弱)

・アパシー

―シチコリン注射が有効

 

■大脳皮質基底核変性症(CBD)

・認知機能改善薬・リバスチグミンとフェルラ酸含有食品(弱)の併用が有効

・パーキンソン症候群治療薬やクロルプロマジンを低用量、併用

 

■進行性核上性麻痺(PSP)

・大脳皮質基底核変性症と基本的には同じ。フェルラ酸含有食品(強)を使用

・歩行障害にはグルタチオン大量点滴が効果的

(『せんぶわかる認知症の事典』河野和彦氏監修を参考)

※サプリメントは治療薬ではありません。使用の検討にあたっては、専門医に相談してください。

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