自分でできる認知症の“予防”と“チェック”
認知症のリスクを少しでも回避するために、日ごろの生活の中で取り組めることもあります。まずは、認知症の原因となる生活習慣から脱却し“予防”すること。そして、自分に認知症の兆しがあるのかを“チェック”してみることです。もちろん、自分だけでなく家族のケアのためにも、ぜひ役立ててください。
認知症は口から入ってくる
現在、世界中の研究者たちが、認知症にならないための予防法について研究を重ねていますが、残念ながら決定的な予防法はまだ見つかっていません。
しかし、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症には、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が深く関わっていることがわかっています。また、動脈硬化の起因となる肥満(メタボリックシンドローム)や喫煙もリスクを上げる要因です。
とくに気を付けるべきは、やはり食生活で、加工食品などは控え、極力野菜中心の食事に転換したり、ビタミンやポリフェノールを積極的にとるよう心がけることが大切です。
ナッツ類やショウガ、アマニ油、えごま油、パクチー、ブロッコリー、海藻、わさびなどは、神経細胞の死滅を防ぐだけでなく、再生促進や活性化も期待できる食品です。
肥満は認知症予防の大敵
逆に絶対に避けるべきなのが、脳の炎症を加速させる糖質の過剰摂取です。そのため、近年ダイエットで注目されるようになった「糖質制限」は、認知症の予防だけでなく進行の阻止も期待されています。
アメリカで実施された調査では、肥満の人はそうでない人に比べ、アルツハイマー型認知症の発症リスクが約3.1倍、脳血管性認知症の発症リスクは5倍にも増えることがわかりました。
また、肥満になると、血糖を一定に保つインスリンというホルモンが正常に機能しない「インスリン抵抗性」を持つようになり、血中のブドウ糖を取り込む細胞の機能を阻害します。すると、神経細胞はエネルギー不足に陥って死滅し、アルツハイマー型認知症につながるという指摘もあります。動脈硬化を促進するのも、脂質ではなく糖質。カロリー制限ではなく、糖質制限をすることが大切です。
病院へ行く前に、まずは自宅でチェック
高齢の家族が、認知症や軽度認知障害の症状に似た言動をとると、「もしかして認知症?」「早く病院に行かなければ」と気が焦ってしまう気持ちはわかります。
しかし、実際に診察をすると、認知症でも軽度認知障害でもなかったというケースは意外に多いよう。そこで実践してほしいのが、自宅でできる認知症チェックです。
ただし、注意すべきなのは、家族が認知症チェックをしようとすると、本人のプライドを傷つけてしまう恐れがあるということです。「認知症なんかじゃない!」と強く拒否されてしまうことのないよう、まずは、日常会話の中でチェックできる方法から始めることをおすすめします。
それは、この1週間にあったニュースを、何か1つ思い出してもらうという方法です。何気なく、「この1週間の間に、どんなニュースがあった?」と聞くと、健常者であれば、「新しい首相が決まった」「有名人が結婚した」などスラスラ答えることができるでしょう。
これが、軽度認知障害だと、「1カ月前のことなら思い出せるけど…」と最近の出来事が思い出せなかったり、認知症になると全く回答が出てこないことがあり、新たに情報をインプットする「記銘」機能の低下や、時間を認識できない「見当識障害」などの兆しが現れていることがわかります。
運転免許の高齢者講習でも採用されている「時計描画検査」
また、もう1つ紹介したいのが、円の中にアナログの文字盤と10時10分を指す長短の針を描き入れてもらうという「時計描画検査」です。
時計回りに1から12の文字を書き入れ、10時10分を指すように2本の針を書き加えるだけ。通常はとても簡単な作業です。
しかし、認知症の可能性があると、12までの数字を円に沿って配置できなかったり、針の長短を正しく認識できなかったり、数字を逆方向に回してしまうなど、“正しく書けない”症状が現れます。
どのようなミスであったかは医師の診断に任せ、まずはこのシンプルな作業に、何らかのミスがあった時点で、一度病院へ行くことをおすすめします。
自分で気になる症状に気づいた場合は、ネットで手軽にできるチェックテストもあります。
たとえば、東京都福祉保健局が提供する「とうきょう認知症ナビ」では、日ごろの行動に関する10項目の質問に「問題なくできる」「だいたいできる」「あまりできない」「できない」の4段階から選んで応えるだけで、認知症の可能性があるかどうかがわかります。