効果的な相続税対策

投稿日:2023.06.08

相続する財産の総額が法律で定められた基準に達すると、相続人が相当額を相続税として国に納めなくてはなりません。生前に大切に築き上げてきた財産は、できるだけ多く家族に残したいもの。そのためにさまざまな節税の方法があります。

もくじ
非課税枠を有効に活用
節税効果の高い「生前贈与」
すぐに現金を授与できる「生命保険」
基礎控除額を増やせる「養子縁組」
専門知識を要する「小規模宅地の特例」

非課税枠を有効に活用

相続税には、基礎控除される非課税枠があります。概要と計算方法は以下の通りです。

 

基礎控除額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数

つまり、控除額が最も低いのは、配偶者のみ、または子一人のみなど、法定相続人が一人しかいない場合で、

3,000万円+600万円×1人 = 基礎控除額3,600万円

となります。

この人数が増えるほど控除額は増え、例えば配偶者のほか子が3人いれば、

3,000万円+600万円×4人 = 基礎控除額5,400万円

と、非課税枠が広がります。

 

もし、相続の総額がこの基礎控除額を上回る場合は、節税対策を検討した方がよいでしょう。

節税効果の高い「生前贈与」

相続税対策のひとつに「生前贈与」という方法があります。これは読んで字のごとく、生前に個人から個人へ無償で財産を贈与することをいいます。

生前贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2種があり、いずれかの方法を選択します。

「暦年贈与」は、年間(1月1日~12月31日)の贈与を受贈者1人につき基礎控除額110万円以下で行う贈与の方法です。そのため、受贈者が2人いれば年間220万円となり、贈与される人数が増えるほど非課税枠が広がります。

少しずつ渡すので、総額が大きい場合に時間はかかりますが、相続税を支払わずに相続財産が減らせるので節税効果は高いです。

「相続時精算課税」は、60歳以上の父母、または祖父母から、18歳以上の子、孫への生前贈与について、2,500万円まで非課税となる制度です。2,500万円をこえた金額には、一律20%の贈与税がかかります。

これは、相続税の支払いを先送りにするような制度で、被相続人である父母、祖父母が亡くなり、相続が始まった時に、贈与財産が相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

この制度のメリットは、2,500万円まで一気に無課税で贈与できること。そして、後に価値が上がることが見込まれる財産を評価額が低いうちに贈与できることです。収益物件であれば、後の相続財産の増加が抑えられ、収益により納税資金の準備ができます。

ただし、逆に贈与時より価値が下がる可能性もあり、その場合は相続税が後の評価額より多い金額に課税されてしまうリスクもあります。

なお、2023年度の税制改正により、相続時積算課税を選んだ人にも年110万円の基礎控除枠が追加されました。

この他にも生前贈与の贈与税が非課税となるさまざまな特例があります。

<住宅取得資金の贈与>
子や孫が住宅を新築・取得・改築するための資金の贈与は、最大1,000万円までが非課税となる。
※2023年12月31日まで適用

<教育資金の一括贈与>
子や孫の教育資金を一括贈与した場合、最大1,500万円(うち学校等以外は500万円)までが非課税となる。
※2026年3月31日まで適用

<贈与税の配偶者控除>
婚姻期間が20年以上の夫婦で、配偶者へ居住用不動産または居住用不動産の購入資金を贈与する場合、最大2,000万円まで非課税となる。ただし、同じ配偶者からの適用は1度のみ。

<結婚・子育て資金の一括控除>
子や孫の結婚・子育て資金として一括贈与した場合、最大1,000万円(うち結婚資金は300万円)までが非課税となる。

※上記は大まかな制度の概要です。細かな要件や適用期間などが変更している場合があるので、最新の情報を確認してください。

すぐに現金を授与できる「生命保険」

「生命保険」で受け取れる保険金は、以下で計算された額が、基礎控除額とは別の非課税枠として認められます。

500万円×法定相続人の数 = 生命保険の非課税限度額

「生命保険」のよいところは、加入者が受取人を指定でき、かつ受取人の固有財産の扱いとなるため、無用な争いが避けられることです。

また、単独手続きですぐに現金支給されるので、相続税の納税資金として役立ちます。

ただし、長期にわたり、定期的に保険料を支払うだけの資金が必要なのと、保険会社の破たんなどのリスクはゼロではありません。

基礎控除額を増やせる「養子縁組」

「養子縁組」をすると相続順位が高い被相続人の子の扱いとなり、法定相続人が増えるため、先に説明してきた非課税枠が広がることとなります。

相続税対策として行う場合は、子の配偶者や孫を養子にするケースが多いようです。

ただし、遺産分割協議に参加する人数が増えるので争いが起きやすくなったり、税務署が節税対策のための養子縁組であると判断すると、法定相続人の増加が否認されることもあるので注意が必要です。

専門知識を要する「小規模宅地の特例」

「小規模宅地の特例」は、土地を相続する場合に、その土地の相続税評価額を用途によって大幅に減額できるという制度です。

なぜ、このような制度が設けられているかというと、不動産は評価額が高額で、相続開始から10カ月の間に相続税を納めようとすると、その額があまりに大きく、すぐにその土地を売却しなくてはならないというケースが多かったためです。

居住用の土地か、事業用の土地か、貸付用の土地か、その用途により要件は以下のように異なります。

・「特定居住用宅地等」 →限度面積330㎡、減額される割合 80%
・「特定事業用宅地等」 →限度面積400㎡、減額される割合 80%
・「貸付事業用宅地等」 →限度面積200㎡、減額される割合 50%
・「特定同族会社事業用宅地等」 →限度面積400㎡、減額される割合80%

この制度は、相続時精算課税制度を使って贈与した場合は適用されません。

また、ここに記載しきれない各要件などが複雑なため、十分な適用を受けるためには専門家に相談することをおすすめします。

※上記制度についてはたびたび改訂なども行われ、細かな要件や適用期間が変更している場合があるので、最新の情報を確認してください。

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