家族の死去に伴うサービスや支払いの解約
普段はあまり意識することがありませんが、私たちは生きていくうえで、実はさまざまな制度に加入し、そしてさまざまなサービスを利用しています。お通夜から火葬まで終え、無事に故人を見送ってひと息落ち着けたら、残った手続きを1つずつ済ませていきましょう。 着手する順番は問われないので、いずれもできるだけ速やかに、期限があるものは期限内に手続きをしてください。
世帯主の名義を変更
世帯主が亡くなった場合、家族構成によっては「住民異動届」を提出する必要があります。引越しの際にも提出するので、ご存じの方も多いかもしれません。
例えば、夫婦2人の家族で世帯主が亡くなった、または配偶者と子が残されたけれど、子が15歳未満の場合は、自動的に配偶者が世帯主になるのでこの届出は不要です。配偶者と子がいる場合で、かつ子が16歳以上の場合は、世帯主がどちらに代わるのかを決めて届けなくてはなりません。
手続きは居住地の市区町村の役場で行い、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類と印鑑が必要です。本人が届け出るのが原則ですが、委任状があれば、他の家族に代われる場合もあります。世帯主の死亡後14日以内という期限があり、これを過ぎると過料が課せられるので、忘れないよう早めに済ませましょう。
年金の受給停止手続き
親が自宅で亡くなったことを隠し、子が年金を受け取り続けていたというニュースをよく耳にします。年金は亡くなった時点で受給資格が亡くなるので、当然ながらこれは不正受給であり犯罪行為です。年金受給者が亡くなったら、遺族は必ず年金事務所に報告をしなくてはなりません。
そのために提出するのが「年金受給権者死亡届」です。故人の年金証書と、故人が亡くなったことを証明する死亡診断書のコピーなどの書類が必要です。
この提出にも期限があり、老齢基礎年金(国民年金)の場合は死亡から14日以内。老齢厚生年金もあわせて受給していたら、10日以内に短縮されてしまいます。この手続きを忘れて受給を続けてしまうと、故意ではなくとも不正受給とみなされてしまう可能性があるので、十分に注意しましょう。
また、支給は死亡月までと決められているので、年金受給者死亡届と同時に「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出すれば、遺族が未払い分の年金を受け取ることができます。
なお、故人のマイナンバーが日本年金機構に登録されている場合は、年金受給権者死亡届の提出は不要です。
健康保険証を返却
日本では、何らかの公的な医療保険への加入が義務付けられています。その種類は多岐にわたりますが、大きくは自営業者や無職の人が加入する「国民健康保険」と、会社員や公務員が加入する「被用者保険」の2つに分けられます。さらに、75歳以上の方には「後期高齢者医療保険」が加わります。
健康保険の効力があるのは、被保険者が生きている間のみです。国民健康保険の保険料は世帯主に支払い義務があります。そのため、世帯主が亡くなると、家族みんなが健康保険を利用する権利を失ってしまい、病気やケガをしたときに非常に困ることになります。
まずは、世帯主であるなしに関わらず、誰かが亡くなったら速やかに「健康保険資格喪失届」を運営団体に提出し、健康保険証も返却してください。
そのうえで、亡くなった方が世帯主だった場合は、世帯員全員の保険証をいったん返却し、世帯主を変更して、改めて保険証を再発行してもらう必要があります。
被用者保険の場合は、もろもろの手続きを勤め先で代行してもらえますが、国民健康保険や後期高齢者医療保険の場合は、家族が居住地の市区町村の役場へ手続きに行かなくてはなりません。
ライフラインに関する支払い停止の手続き
最近では、電気やガス、水道などの公共料金や、電話代、新聞代など、ライフラインに関連する毎月の支払いは、口座からの自動引き落とし、またはクレジットカード決済が主流です。
亡くなった方が契約者の場合、口座が凍結されて引き落としができなくなることが起こりえます。また、電話や亡くなった方のみが購読していた新聞などは、早く解約をしないと余計な料金がかかってしまいますので、いずれにしてもただちに解約、または名義変更の手続きをしましょう。
なお、口座凍結の可能性は認知症患者にも同じことがいえます。自動引き落としに対応できなくなった場合は、周りの人が速やかに対応してください。
その他の契約サービスの解約
ライフライン関連のもの以外でも、さまざまなサブスクリプションサービス、定期購読している雑誌、また趣味のスクールなども、自動で料金が引き落とされてしまいます。各運営会社は契約者が亡くなったことを把握できないので、それぞれの退会手続きをしましょう。
クレジットカードについては、リボ払いやキャッシングの残債がある状態で解約すると、相続人に一括返済の義務が課せられます。このようなマイナスの遺産については、現金や不動産などプラスの遺産とあわせて考え、もしもマイナスが多いようであれば、相続放棄という決断もあるかもしれません。
また、運転免許証やパスポートなどの公的証明書は、放っておいても料金が発生することはありませんが、返納は義務であり、また、誰かの手に渡って悪用される可能性もあります。手続きに手間は生じますが、速やかな処理をおすすめします。